2010年12月6日月曜日

参議院法務委員会(平成22年10月21日)司法修習生の貸与制について

平成22年10月21日に行われた
参議院法務委員会について今回は記載したいと思います。

尖閣諸島に関する問題や検察の不祥事に関しても多数ふれられていましたが、
そちらはニュースなどでも多数報告されていたので、私は
司法修習生の貸与制』について議論された点について記載したいと思います。
今回も法務委員会のテキスト(文字起こし)については下部に記載します。

まず『司法修習生の貸与制』に関しても基本的な知識を記載いたします。

2010年度以前の司法修習生については裁判所法67条2項によって
国家公務員と同様に国から給与が支給されていたのですが、
2010年11月(新第64期生)からはこの給与支給が廃止になりました。

上記に伴い、最高裁判所による無利息の貸与制が開始されました。
この貸与についえは5年間返済が据え置かれ、その後10年以内で返済することになっている。

このことについて弁護士会などは
弁護士会を中心にして、貸与制が施行されてしまったならば金持ちの子供しか弁護士になれなくなってしまう』というような批判があったことが紹介されました。

今回の法務委員会の中で貸与した金銭の返済可能性に関する議論の中で
任官5年程度の判事補の年収が700万円前後ということが最高裁判所人事局長
大谷直人さんがおっしゃり意外と低いんだなと感じました。

他にも委員が指摘しておられましたが、司法修習時の貸与制による負担よりは
法科大学院での学費の問題が大きいということは納得できました。

では、該当部分の文字起こしを記載いたします。

前川清成委員 

 司法修習生の貸与制の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 2004年に法律が改正されまして、それまで司法修習生に給料が支払われておりました。私も今からおよそ23年前に月額15万円の給料をいただいて、本当にあの給料は今までいただいたお金の中で一番うれしかったと、そう思っています。
 しかし、法律が改正されて、この秋に司法試験に合格しこの秋に修習生に採用される皆さん方からは生活費が貸与される、そういう制度に変わりました。五年間の施行期間を経て、この秋に施行される予定でございます。ところが、弁護士会を中心にして、貸与制が施行されてしまったならば金持ちの子供しか弁護士になれなくなってしまうというような批判が起こりました。 そこでまず大臣に、基本的な発想として、貸与制云々どうこうの技術的なことはお伺いいたしませんが、基本的な思想として、金持ちの子供しか弁護士になれない、そんな社会についてはどのように感じておられるのか、思っておられるのか、お伺いさせていただきたいと思います。

柳田法務大臣
 金持ちの子供しか弁護士になれない社会、どう考えてもそれはおかしいですよね。努力した人もなれるというふうになるべきだろうと。そうなるようにいろいろ考えて当時国会でお決めになったんではないかと私は思っていますけれども、まあこれも国会でお決めになることでありますが、国会でお決めになれば私としてはそれに従うと。だれも反対意見述べているわけじゃなくて、国会でお決めになれば従うという方針でございます。
前川清成委員 今大臣がおっしゃったとおり、普通の家庭に生まれた子供であっても、さらには経済的に厳しい家庭に生まれた子供であっても、努力をすれば、頑張ったら弁護士になれると、そんな社会の基盤を守ること、これは政治の大切な役割ではないかと私は思っています。何も弁護士だけを切り取って議論をするつもりもありません。医師になりたい、エンジニアになりたい、教員になりたい、あるいはプロ野球選手になりたい、この国に育つすべての子供たちがその意思と能力に応じた教育を受ける機会が保障されること、そんな社会をつくっていくこと、これは私たち民主党政権の大きな目標の一つでありますし、親の財布の重さで子供たちの未来に差があってはならない、この当たり前の正義を守っていくことも大切なことだと思っています。 以上の基本的なスタンスを前提にお伺いしたいんですが、貸与制が施行されますと、基本額として毎月23万円が貸与されます。無利息で司法修習後五年間据え置かれて、十年間で分割返済することになります。すると毎月2万3千円ずつの返済になるんですが、任官五年後の裁判官、検察官にとってこの負担は重いのか、最高裁にお伺いをいたします。

大谷直人最高裁人事局長
 お答えいたします。
 裁判官ということで、私どもの所管ということで、裁判官についてお答えしたいと思いますが、任官五年あるいは六年といったキャリアを要する判事補の年収は700万円前後ということでございまして、貸与金について、今委員のお話にありましたようなこういう貸与制のスキームの下で、委員御指摘の2万3千円という額を返済することが重い負担になるということはないと私どもは認識しております。

前川清成委員

 私、今の大谷さんのお答えはそれで結構なんですが、ただ、私は裁判所なんで裁判官についてお答えしますという言い方には気に入りません。なぜならば、この司法修習制度を運用していくのは日弁連でも法務省でなくて、裁判所なんですから、検察官の給与水準についても、あるいは弁護士の所得についても、最高裁は当然検証した上で、毎月2万3千円だったら大丈夫ということでこの法案が提出され、施行されるんじゃないかと思っています。
 大谷さん、もう一度。


大谷直人最高裁判所人事局長
 お尋ねでございますので、それではもう少し御説明したいと思いますが、検察官につきましては、これは法務省の方からそういう重い負担になるということはない、そういう話は聞いておりません。
 それから、弁護士でございますが、弁護士につきましては、弁護士白書の2009年版というのが公刊されておりますが、これによりますと、弁護士経験五年以上十年未満、こういう人たち、弁護士のうち75.4%の方が500万円以上の所得を得ているというふうにこれが報告されておりまして、こういうことからしますと、基本的に返還が過大な負担になるということは言えないのではないかと、このように考えております。


前川清成委員 
 しかし、神ならぬ身ですから、病気になることもあれば、その他の事情で働きたくても働くことができない場合もあります。そんな場合は最高裁として苛斂誅求に及ぶのか、大谷さんにお伺いいたします。
大谷直人最高裁判所人事局長 
 現在の法律の下では、裁判所法におきましてこの返還の期限の猶予、それから返還免除という規定がございます。これについてちょっと御説明をするということでよろしいでしょうか。
 まず、猶予の点ですけれども、これは法律の中で災害や傷害ということが例示されております。したがって、災害、傷害と、失礼しました、傷病といったもので返還できないというときが問題になる場合には、それに当たるかどうかを客観的な資料で見ていくということになります。
 さらに、その猶予につきましては、その他やむを得ない事由ということも猶予の事由に挙げてあるわけですが、これは法律の条文の形式から見ましても、災害、傷病に準ずるような客観的な事情によって収入を得ることができなくなった場合を想定しているものと解されるわけであります。
 したがいまして、この点は法務省も同じように解しているということでございますが、具体的に言いますと、例えば育児休暇、休業、あるいは介護と、こういった理由によって一定期間収入を得ることができないといった場合がこれに当たるのではないかと現時点では考えております。 あと、免除はよろしいですか。

前川清成委員
 分かりました。
 それで、裁判官や検察官、これは毎月、事件があってもなくても決まった金額の給料を受けることができますが、弁護士はそうではありません。売上げが落ちてしまった、生活が苦しい、特に合格者がどんどん増えて若い弁護士の皆さん方の生活が成り立たないというような声も上がっています。
 売上げが落ちて厳しい、そんなケースでもやっぱり有無を言わさず取立てに及ぶんでしょうか。

大谷直人最高裁判所人事局長
 これは今の時点でまだ発生していることではございませんけれども、一般論として申し上げれば、先ほど申したとおり、やむを得ない事情ということについては先ほどのような解釈が一般的だろうと思います。
 そういうことを前提としますと、弾力的にこの条項を解釈して、そして返済期限を猶予するということを広く解していくということは、この現行法の枠の中では一般論としては非常に難しいのではないかと思います。


前川清成委員
 今のはちょっと意外なお答えでした。私はもっと、将来ある法曹、公共的な役割を担う法曹が一生懸命、例えば無罪の事件とか公害の事件とかあるいは消費者問題とか、これ取り組んだらお金はもうからない。公共的なことを世の中のために一生懸命やってお金がもうからなかった。その結果、裁判所から借金を取立てされる。これはいかがなのかなと。
 本当に手元にお金があるのに横着で払っていないというようなケース、それこそ税金の無駄遣いになるから厳しく取り立てろというのは分かりますが、公務員と弁護士とはそもそも収入の体系が違う、売上げがすなわち可処分所得ではないというようなことも理解した上でこれから運用されるのかどうか。
 今のような御答弁があると、与野党共にやっぱりこの貸与制って問題あるのかな、不安な気持ちを私は抑えることができないんですが、大谷さん、そうなんですか。



大谷直人最高裁判所人事局長
 弁護士が十分な一年という単位の中で収入が得られない場合があるというのは御指摘のとおりだろうと思いますが、今委員からもお話ありましたように、その理由は様々なものがあるのだろうと思います。
 その公益的な理由というような場合にその猶予ということを弾力的に解していいかと、こういう点になりますと、これはどうも現行法の枠組みを超えた立法政策的な配慮からそういうものを認めていくかという問題になるのではないか、そういう意味では、立法によってそういった救済をすることの是非を御議論いただきたいと私どもとしては考えております。

前川清成委員
 私は、「その他やむを得ない理由」というふうに書かれてあって、「猶予することができる。」と、こういうふうに法律の条文があるわけですから、最高裁が責任を国会に押し付けることなく、最高裁の御判断で、世の中のために一生懸命頑張っていると、だから余りもうからない、そんな弁護士に苛斂誅求はしませんとここではっきりおっしゃっていただけるものだとあらかじめ信じていました。
 次に、じゃ、神ならぬ身ですから、死んでしまいましたと、あるいは交通事故で重篤な後遺症が残りましたと。この場合については、裁判所法六十七条の二、四項、「全部又は一部の返還を免除することができる。」と、こう書いてあるわけですけれども、この「免除することができる。」という文言も二項と同じように解釈しておられるのか。つまりは、死亡若しくは精神若しくは身体の障害、これに同列の事由が生じない限りは免除することはできないというふうにこれから運用しようとされているのか、最高裁にお尋ねをいたします。


大谷直人最高裁判所人事局長
 あくまでも将来事例が発生したときにこの問題が顕在化することになるということで、一般論としてこの段階ではお許しいただきたいわけですが、条文を比較しますと、免除の場合には限定的な事由の列挙になっております。したがいまして、ここにあるような事情が客観的に発生したと、例えば医師の診断書等によって認められる場合に免除されると、こういうことが運用だろうと思っております。
前川清成委員
 裁判所というのは、あるいは法廷というのは、ある種、闘いの場所でして、それは相手方代理人との闘いでもありますけれども、裁判所との闘いでもあります。
 例えばですが、私が弁護士のころに、消滅時効に掛かった債権をサラ金から二束三文で買い取って、その債権に基づいて取立訴訟を起こすという悪徳サービサーの取立て事件の被告代理人を引き受けたことがあります。当然のことですが、消滅時効を援用しますと、なりたての裁判官から和解を勧告されます。裁判官室で、先生、これ、消滅時効を援用されたら、元金は消えるけれども遅延損害金が残りますがどうしますかというようなあほなことを言われてしまいました。さらには、出会い頭の交通事故で差額分だけ和解しようとしたら、民法五百九条を御存じですかと、そんなふうに言われてしまいました。そんなときに、明らかに裁判官が間違っているときにでも御無理ごもっともというふうに言うてると、依頼者の権利を守ることはできないわけです。
 ただ、裁判所に対して司法修習生のときに借りた借金があると、そういう負い目があると弁護士や検察官は法廷で言いたいことが言えないんじゃないかと。とりわけ私のような気の小さい人間はそうなんですが、その点の精神的な負担等々をどのように考えて、そして、そういうふうな精神的な負い目が生じないように最高裁としてはどうなさろうとしているのか、最高裁にお伺いいたします。

大谷直人最高裁判所人事局長

 この貸与制についての実施の責任は裁判所が負っておりますが、もとよりこれは国の税金として貸与するということでありますので、何か裁判所に対しての負い目があるとかないとかいうことを弁護士の方が思っていただく必要は毛頭ないのだろうと思います。
 あとは、具体的な事項について、特に免除という点につきましては、二つの制度、返済の猶予と免除というのを比較すると、それを弾力的に運用するということが難しいのではないかということを今の時点で申し上げたということであります。

前川清成委員
 この点、通告をしていないので誠に恐縮なんですけれども、私は、貸与制に関して延長論が出ています、しかし、最高裁からこのようなしゃくし定規な答弁があると思っていませんでした。貸与制が施行されたとしても、検察官や裁判官やあるいは弁護士の収入実態から見て毎月2万3千円は返せますよと、だから、あるいは病気になったら、けがをしたら心配しなくてもちゃんと猶予規定なり免除規定を使いますよと、どうぞ心配しないでくださいねと、こういうふうな親切な御答弁があるのかなと思っていたんですが、今のような御答弁を聞くと、昔、司法修習生として給料をもらっていた一員としてはこの貸与制の施行に関して一抹の不安を抱かざるを得ないんですが、済みません、かつて司法修習生として給料をもらっておられた小川副大臣、通告させていただいていないんですが、かのような次第でございますので、ちょっとお考えをお聞かせいただいてよろしいでしょうか。
小川敏夫副大臣 
 確かに、修習生の時代に給与をいただくということで生活を支えていただいて修習に専念できるということは、非常に修習生から見てもいい制度でありましたし、また、一方で、法曹になった後も借金を引きずらないので、自分の信念に、あるいは正義感に従って自由に仕事ができると。あるいは、国に負担をいただいて言わば修習を受けさせていただいた、その御恩返しに公に御奉仕したいというような気持ちもわいてくるというふうなことで、非常にいい制度であったというふうに実感しておりますが。
 ですから、そうした制度が続けば、それはそうした修習生から見れば大変にいい制度だと思っておりますが、ただ、司法制度改革で法曹制度、法曹の数をこれから、まあ私のころは年間500人でありましたが、制度の仕組みとしては年間三千人に増えていくというような状況もございますし、また、国のため、公のために尽くす仕事が、法曹だけでなくて、様々な分野で働いていらっしゃる方もやはり様々な在り方で国のため、社会のために役立っておるわけでございますから、法曹だけがというところの意見もございますでしょうし、また大変に厳しい財政の問題というのもございます。私は理想としては維持していきたいと、維持したらいいのかなとは思っておりますが、なかなか難しい事情もあるのかなというような感想でおります。

前川清成委員
 済みませんでした。
 それで、私は実はこの貸与制の問題、司法試験に合格してこれから司法修習生になる、そんな皆さん方だけを切り離して貸与制か給費制かということを議論するべきではない、そう思っていました。法曹養成制度全体を見渡した上で、金持ちの子供しか弁護士になれない、そんな社会をつくってはならない、そんな視点で議論するべきではないか。そんな視点で申し上げると、やはり気になるのは法科大学院のことであります。
 旧司法試験が終了をいたしました。来年、口述試験を残すだけになりました。新司法試験一本になりますと、新司法試験の受験資格は予備試験という例外を除いて法科大学院を修了していることになってしまいます。なぜ司法試験の受験資格に法科大学院の修了を要件とするのか。その結果として、国立の法科大学院であれば一年間に八十万円、私立であれば百三十万円、原則として三年間、大げさではなく五百万円程度の学費を用意しなければ、そもそも司法試験の受験資格さえ得られなくなってしまう。これが本当に正しいのか、この点について法務省にお尋ねしたいと思います。

小川敏夫副大臣
 そもそも司法制度改革の中で、法曹養成制度も司法試験制度も含めて大きな改革といいますか変更を遂げたわけでございますが、その一つの出発点としましては、それまでの司法試験制度が言わば司法試験一発で、点数さえ取れば司法試験に合格するというようなところで、言わば司法試験予備校というものでただ単に試験に受かるための知識を積み込めばいいような傾向が現れまして、結果として、本来国民の権利義務を扱う、そうした面から高い倫理性、公共性というものが求められる法曹という面にその期待にこたえないような実態が現れてきたんではないかというような反省も含めまして、そうした倫理観、人間性もよく備えた法曹をしっかりと養成していかなくてはならないと。そのために、ただ単に一発勝負の試験の点数を取るということだけでなくて、ロースクールにおいて実務とそれから倫理も、そうしたものも含めた教育を経た上で、より中身が伴った法曹を養成しようというような理念で出発したことだというふうに思っておりますが、いろいろその理念どおりに行っていないという現状もまたございます。
 また、委員が御指摘のように、経済的に苦しい人が法曹になれないということはこれはあってはならないことでございます。試験に受かった人だけでなくて、その前段階のロースクールにおいてもそうしたことがないように、言わば奨学金の手当てなどをより充実して、委員が御心配されている点がより解消されるような努力はしていきたいというふうに思っております。

前川清成委員
 試験の点数で評価すること、これをまあ悪く言えば今副大臣御指摘になったとおりなんですが、しかし試験の点数だけで評価することはある種、客観的であり、ある種、公平でして、法科大学院が理念としたプロセスとしての選抜、これはえこひいきだったり、あるいは不公正さのにおいをどうしてもぬぐい去ることはできませんし、倫理観や人間性、これは法曹にとって極めて大事なことでしょうが、倫理観や人間性をこれは点数で評価することができません。ですから、法科大学院の在り方も私はそろそろ検証してもいいのではないかな、そんなふうに思っています。
 それと、お金がないと弁護士になれない、裁判官になれない、そんな社会を許さないためには決して予備試験のハードルを高くしてはならないんじゃないのか。そもそもなぜ予備試験というのが必要なのかと。司法試験がきっちりと機能していたら、きっちりと運用されていたならば、法曹に必要な資質というのは司法試験で判断されるわけですから、屋上屋を重ねるような予備試験がなぜ必要なのか、私は疑問に思っています。
 司法試験に合格するために法科大学院に行くのか、あるいは経済的な理由もあり独学を選ぶのか。勉強方法まで国が押し付けるのではなくて、それはそれぞれの子供たちがそれぞれの経済的な事情等を勘案して自分で判断するべきではないか。私はそう思っていますが、もし感想のようなものがあればお聞かせいただきたいと思います。

小川敏夫副大臣
 この法曹養成制度、当初の設計では年間三千人程度と、あるいはロースクールを修了した人の約七割前後が法曹の道を歩むというような設計でございましたが、現実の状況はまだ二千人、あるいはロースクールの修了者の合格率も最近はかなり下がって、三割前後ですか、下がってきているというような状況でございます。 こうした法曹養成制度そのものが当初の設計と違うということの現状も踏まえまして、また委員が御指摘されたような経済的な困窮者の問題、予備試験の問題等もございますので、この段階で新たに法曹養成制度そのものを全体的に考えていく時期に来たのかなというふうに思っております。そのようなことで検討を進めていきたいと思っております。
前川清成委員
 大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますが、私は司法制度改革審議会が描いた法曹養成制度に様々なひずみが生じているのではないかと思っています。司法制度基盤の整備もないままに合格者を三千人にまで一挙に引き上げてしまったならば、就職できない弁護士がちまたにあふれてしまうんじゃないのか。それでもいいのか。もしそんなことになると優秀な学生が法曹を目指さなくなってしまうのではないか。そんなことも承知の上で三千人にまで増やしていくのか。司法試験の合格者数を司法試験委員会が密室で決めるんじゃなくて、政治主導で議論をリードするべきではないかなというふうにも思っています。
 あるいは、司法制度改革は法曹人口を増員するという目標を掲げました。しかし、実際には弁護士の人口だけが増えています。裁判官や検察官の増員というのはわずかです。この委員会でも与野党一致して裁判官や検察官、もっと増やすべきだというふうな議論がありましたけれども、裁判所は適正数を確保するという官僚答弁を繰り返して今までどおりを墨守しようとしています。それでいいのか。
 あるいは、法科大学院に関しても、これまでにわずかの、数人の合格者しか出せていない法科大学院もあります。法科大学院は実務家を養成する仕組みとして適当なのか。学者が中心の法科大学院で、裁判所に行ったこともない学者が実務家を養成することができるのか。法科大学院という仕組みがもしかしたら間違っていたのではないか。法科大学院が優秀な教員を確保できているのか。入試はどうか。選抜方法に問題はないのか。さらには、今日少し議論させていただきました法科大学院の学費や司法修習生の生活費などなど、金持ちの子供しか弁護士になれないという制度ではなく、法曹養成システムがだれに対しても開かれた公正なものになっているのか。 私は、この十年間で大きく変換した法曹養成制度、これを走りながらでも検証する、修正するべき点があれば修正する、そんな活動がそろそろ必要ではないかと、そんなふうに思っています。
 いかがでしょうか、大臣も所信の中で問題点を、様々な御意見があるところですので、文部科学省など関係機関とともに問題点を検証しつつ、必要な改善策を検討してまいりますと、こういうふうに述べておられます。結論や方向をあらかじめ示すことなく、幅広く法曹養成システムを検証するために政治主導で大臣直属の特命チームをおつくりいただいてはどうかと私は考えておりますが、大臣いかがでしょうか。

柳田法務大臣
 前川委員のお話を聞いていますと、つい、はいと言いたそうになりますけれども、お話の内容を聞いていますと、これは教育関係もいろいろと含まれているようでありますので、私の下の特命チームというよりは、やはり文部科学省との議論も必要なのかなと思います。
 先ほど小川副大臣がお話しされましたように、我々三人も検討する時期なのかなと、そんな思いを持っていますので、そういう思いで進めさせてもらえればと思っております。

前川清成委員
 どうもありがとうございました。
 今日はいわゆる強制起訴に関する指定弁護士の問題も質疑させていただく予定だったんですが、残念ながら時間が参りました。これで今日の質問は終わらせていただきたいと思いますが、この法曹養成の問題につきましても、あるいは契約法の改正につきましても、これから一生懸命取り組んでまいりますので、引き続きよろしく御指導をお願い申し上げまして、私の今日の質問、終わらせていただきます。
 本日はありがとうございました。

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